『生贄探し 暴走する脳』

こんにちは。
西の読書めがねです。


少し前の話ですが『コンビニ人間』を読んでいてこんなことを考えたことがあります。


それは、世の中には、おせっかいな人が本当に多いということです。


『コンビニ人間』を読んだことがある方は、お分かりだと思いますが、主人公は一般的な人とはいえません。


そんな主人公に対して、周囲の人間は「良かれと思って」色々なことを言ってきます。


そのような様々な「良かれと思って」を見ていると、なんで他人の人生にこんなに口を出す人が多いのだろうかと辟易した気持ちになります。


なんで人間と他人を他人として、そっとしておくことができないのだろうかと思いました。


『コンビニ人間』は、フィクションですが、現実社会でも他人の言動に対して、あれやこれやと言ってしまう人が多いです。


最近では、SNSを通じて他人に対して誹謗中傷や罵詈雑言を繰り返して、最悪のケースでは死に至るようなことも起こっています。


なぜ私たちは、他人に対してこのようなことをしてしまうのでしょうか。


なぜ、「生贄」を見つけると攻撃せずにはいられないのでしょうか。


そこで今回紹介する本は、『生贄探し 暴走する脳』です。


なぜ私たちは、他人を攻撃してしまうのか。どうすれば他人とうまく折り合いをつけていけるのかということを考える上で良い本だと思います。


よければお付き合いください。


読む前と読んだ後では、どんな変化がある?


この本を読んでいただければ、なぜ、私たちが他人を批判せずにはいられないのかということがよく分かります。


他人を批判したり、攻撃したりしてしまうことの原因について、著者たちはこのように述べています。


他人が失敗したり、不幸に陥ったりした時に、思わず湧き上がってしまう喜びの感情を残念ながら人間は持っています。


まさに他人の不幸は蜜の味です。ネット用語で言えば、「メシウマ」です。


この感情を一人でもっている分には、いいのですが、どうしても他人に対して川に落ちた犬を叩くような勢いで猛烈に批判や誹謗中傷をせずにはいられない人がいます。


特に現代社会においては、この感情がSNSなどを通して拡散してしまうことでその影響が拡大しています。


また、他人を批判したり、誹謗中傷する人についてこのようにも述べています。


人間は、自分が正義を行っていると信じている時には、どこまでも残虐になれるものです。もし、そこに権威の存在があれば、なおさらです。


著者たちは、このような人たちを「正義中毒」と呼んでいます。


これは本当に怖いことです。
自分たちは正しいことを行っていると思っているので、行動が過激化していく恐れがあります。


正義を行っていると思っている人たちが集団化してしまい、その中でエコーチェンバー現象を繰り返していくとより過激化、先鋭化してしまう恐れもあります。


そして、自分と異なる意見を言っている人を集団で批判したり、誹謗中傷したりします。


実際にネットで過激な発言をしている人たちには、このような傾向が見られると思います。


「正義中毒」には、誰でも感染してしまうので、私自身も注意しなければいけないと思います。


どんなところが自分のためになった?


私たちは、このように「正義中毒」になってしまい、他人を攻撃してしまう恐ろしい一面を持っています。


私たちは、そうならないためにどのようなことができるのでしょうか。


そうならないために著者たちは、本の中で「遊び」の必要性を述べています。


杉浦日向子さんの一連の著作にもありますが、江戸っ子といえば怠け者の代名詞です。そして、「遊び」というのは、単なる暇つぶしや無駄な時間をすごすことなどではなく、人々が敬意と好意を持って受け止めるかっこいいものであったと言います。その余裕があればこそ、社会排除の暴走を各自が受け止めることも叶います。しかし、他者(余所者)を受け入れる。余裕を持てないほど「遊び」の失われた社会では、何か起こるか、もう恐ろしいほど自明ですね。


一見無駄に思えるようなことを「遊び」として受け入れるだけの余裕を持つことが他人を受け入れるためには必要ということだと思います。


この「遊び」ということで言えば、今の日本はとても窮屈な印象があります。


私は、「遊び」を許容するためには、各人が経済的に自立するということが求められると思います。


経済評論家の上念司さんもよくおっしゃっていることですが、「経済的に困窮すると救済を求めて過激思想に走る」ということがしばしばおこります。


経済的に困窮してくると違った意見を持った人やマイノリティに対して暴力を伴った過激な行動に出てしまうことは歴史を見ればよくわかることです。


他人を受け入れるための寛容さを持つための余裕をもつためにも経済的に豊かになるということが必要だとこの本を読んで改めて思いました。


政治家の皆さんには、社会の分断をなくすためにも経済を成長させて、国民を豊かにする必要があるということを肝に銘じていただきたいところです。


まとめ


いかがだったでしょうか。『生贄探し 暴走する脳』に興味を持っていただけたでしょうか。


少しでも興味を持っていただけましたら、是非読んでみてください。


最後に私がこの本で特に印象に残った部分を引用させていただきたいと思います。


たちはまるで「優れていないといけない病」に蝕まれているようです。現実には、ウイルスにも勝てていないのに


私も含めて、人間というのはどうも傲慢な存在のように思います。


この傲慢さを少しでも和らげることができたら、周りの人や他人にも少し優しくなれるのではないかと思います。


今回紹介した本
『生贄探し 暴走する脳』中野信子 ヤマザキマリ 株式会社講談社


読書を通して自分らしく生きていける人が一人でも増えることを心から願っています。


その助けに自分がなれるのであれば、こんなに幸せなことはありません。


西の読書めがね